「南海トラフ地震って、結局いつ来るの」
この質問には、実ははっきりした答えがあります。ただ、その答えは2025年に少しだけ形を変えました。ニュースではあまり大きく扱われませんでしたが、備える側にとっては知っておきたい話です。
この記事では、予測の中身と、家でできる備えの目安をまとめました。こわがらせるための記事ではありません。読み終わったときに「これなら今日できそう」と思えるところまでご案内します。
🌏 南海トラフ地震はいつ起きると言われているの
いま多くの専門家が口にしているのが「2030年代」という時期です。
京都大学名誉教授の鎌田浩毅さんは、2035年を中心に前後5年、つまり2030年から2040年の間に起きると説明しています。ピンポイントで何月何日と当てることはできないけれど、10年の幅ならほぼ確実に言える、という立場です。
国の想定も出ています。2025年3月に内閣府の作業部会がまとめた最新の被害想定では、最悪の場合で死者が約29万8000人、経済被害は約292兆円とされました。前回2012年の想定から死者は約1割減りましたが、被害額は約72兆円ふくらんでいます。

🐟 2035年という数字は江戸時代の漁師さんの記録から
なぜ2035年という数字が出てくるのか。ここが少し意外です。
高知県室戸市に室津港という港があります。南海地震が起きるたびに海底が持ち上がって港が浅くなり、船が出入りしづらくなる。だから江戸時代から地元の漁師さんたちが、港の水深を測って記録に残してきました。
その記録を見ると、地震のあとに持ち上がった地面は、時間をかけてゆっくり沈んでいきます。1946年の昭和南海地震で持ち上がった分が、同じ速さで沈み続けてゼロに戻るのが2035年ごろ。ここに誤差を5年ほど見込んだのが「2035年プラスマイナス5年」です。
暮らしのために続けられた記録が、いま国の予測を支えている。ここまできちんとした記録が残っている場所は、世界でもここだけと言われています。
💥 東日本大震災の「15回分」がいっぺんに来る
2011年の東日本大震災で亡くなった方は、約2万人でした。
南海トラフ地震で想定されている死者は、最大で約29万8000人です。東日本大震災の、およそ15倍にあたります。
あの震災が15回分、いっぺんに来る。それが2030年代のどこかの日に起きるということです。(東京〜九州間、太平洋側)
数字が大きすぎて、正直ぴんと来ないかもしれません。それでも、いまはまだ動ける時間が残っています。
📊 2025年に国の発表が変わったことをご存じですか
ここからが、あまり知られていない話です。
政府の地震調査委員会は長いあいだ「今後30年以内に80%程度」という数字を使ってきました。ところが2025年9月26日、この長期評価が見直され、「60〜90%程度以上」と「20〜50%」という2つの数字が併記されることになりました。
見直しの焦点になったのが、まさに室津港のデータを使う計算方法です。データの信頼性に議論があり、不確かさを考えに入れた結果、2つの数字が並ぶことになりました。
ただ、どちらの数字でも評価は変わりません。海溝型地震の3段階のランクで、いちばん高い「Ⅲランク」のままです。委員会も、防災を考えるうえでは高いほうの「60〜90%程度以上」を使うのが望ましいとしています。
数字が2つになったと聞くと「じゃあ低いほうかもしれない」と思いたくなります。でも、20%でも5回に1回。備えをゆるめる理由にはならない、というのが専門家の共通した見方です。
🏠 家が無事でも暮らしは止まります
被害想定でいちばん見落とされやすいのが、建物ではなくライフラインの数字です。
停電は最大で約2950万軒。電柱がやられた場合、復旧までに1〜2週間かかると見られています。断水は最大で約3690万人、東海三県では95%まで戻るのに約8週間という想定です。
家が壊れなくても、電気と水が止まった部屋で1週間から数週間を過ごす。これが多くの人にとってのリアルな姿になります。避難所ではなく自分の家で過ごす「在宅避難」を前提に考えたほうが、現実的です。

🚽 いちばん先に困るのはトイレです
水と食べものは、なんとなく思いつきます。でも実際に被災した方が「いちばん困った」と挙げるのはトイレです。
内閣府のガイドラインでは、1人が1日に5回トイレを使うと想定しています。4人家族で1週間分なら、4人×5回×7日で140回分。数字にすると、思っていたより多いはずです。
しかも断水中は水を流せません。下水管が壊れていれば、水があっても流すと逆流します。マンションの上の階なら、なおさら注意が必要です。
食べものを我慢する人はいませんが、トイレは我慢してしまいます。水分をひかえて体調をくずす方が多いのは、このためです。
🍚 電気もガスも止まった日のごはん
つぎに食事です。ここは「お湯が使えるかどうか」で選ぶものが変わります。
お湯が沸かせないときに頼りになるのが、水を注ぐだけで食べられるアルファ米です。カセットコンロが使えるなら、温かいものが食べられます。
そして、電気もガスも止まった状態で温かいごはんを炊く道具もあります。新聞紙を燃料にして炊く「魔法のかまどごはん」がそれです。ただし使える場所に条件があるので、そこは後ほど正直にお伝えします。
⚠️ こんな人には向きません
先に、合わない場合をお伝えします。ここを飛ばして買うと、いざというときに使えません。
新聞紙で炊くタイプが向かない方
集合住宅にお住まいで、庭やベランダで火を使えない方には向きません。屋内・テント内・車内など換気の悪い場所では使えない製品です。新聞を取っていないご家庭も、燃料の確保を先に考える必要があります。
アルファ米が向かない方
毎日の食事に近いものを求める方には物足りなく感じます。水だけで作ると60分かかるので、すぐ食べたい場面には向きません。
簡易トイレが向かない方
収納場所をまったく取れない方には難しい備えです。1週間分となるとそれなりのかさになります。使用後の袋を保管する場所も必要です。
そもそも備蓄が続かない方
買って押し入れに入れたまま、期限を切らしてしまう。これがいちばん多い失敗です。ふだんの生活でも使えるものを選んだほうが、結果的に続きます。
📋 3つの備えを比べてみました

| 備え | 得意なこと | 合わない条件 |
|---|---|---|
| 簡易トイレ | 断水と下水停止の両方に対応できる | 収納場所が取れない/必要数を計算していない |
| アルファ米 | 火も電気もなしで食べられる | すぐ食べたい/水しかないと60分かかる |
| 新聞紙で炊くかまど | 電気もガスもなしで温かいごはんが炊ける | 屋外で火を使えない住まい/新聞紙が手に入らない |
3つ全部をいきなりそろえる必要はありません。優先順位をつけるなら、トイレ、水、食べものの順です。
🚽 トイレから始めるなら
防災グッズは「買ったまま一度も使わないもの」になりがちです。だからこそ、ふだんの暮らしになじむ形で置いておけるかどうかが大事になります。
スツーレは、日常と非常時の境目をなくす「フェーズフリー」という考え方で商品を作っている、トイレに特化した防災ブランドです。一般社団法人災害防止研究所の防災グッズ大賞を2024年と2025年、2年連続で受賞しています。
簡易トイレ、椅子として使えるタイプ、目かくしのテントなど、住まいの事情に合わせて選べます。ひとつ知っておきたいのは、このブランドはトイレの専門店だということ。水や食べもの、ライトは別でそろえる必要があります。処理袋の付属枚数も商品ごとに違うので、購入前に確認してください。
必要な回数を計算してから選ぶと、失敗しません。
▼防災士監修のトイレ専門ブランド
🍚 お湯がなくても食べられるごはんを
非常食でよくある失敗が、家族の誰かが食べられないものを買ってしまうことです。アレルギーのあるお子さんがいるご家庭では、けっこう深刻な問題になります。
アルファー食品の安心米は、特定原材料等28品目を使わずに作られたアルファ米です。国産のうるち米を100%使い、熱湯なら15分、水なら60分でお茶碗大盛り1杯分ができあがります。袋がそのまま器になり、スプーンも中に入っています。
公式サイトを見ると、あまり宣伝されていない細かい配慮が見つかります。白がゆと梅がゆはユニバーサルデザインフードの「歯ぐきでつぶせる」認証を取っていて、噛む力が弱くなったご家族にも向きます。おこげタイプは7年保存、安心米クイックなら熱湯5分・水30分と早くできます。ハラール認証を取っている商品もあります。
保存期間はごはんタイプで5年。9食セットなら1人で3日分の目安です。
家族の顔を思い浮かべながら選んでみてください。
▼28品目不使用で5年保存の非常食
🔥 温かいごはんを、電気なしで
被災した方への聞き取りで「食事が唯一の楽しみだった」という声があったそうです。冷たいものばかりが続くと、気持ちのほうが先に参ってしまいます。
タイガー魔法瓶の魔法のかまどごはんは、新聞紙を燃料にしてごはんを炊く道具です。3合なら新聞紙1部、36ページ分。白米は1合から5合まで炊けます。2024年のグッドデザイン賞と、2024年の日経優秀製品・サービス賞最優秀賞を受けています。
大事な注意点を先にお伝えします。屋内・テント内・車内など換気の悪い場所では使えません。火を使える屋外のスペースがあるかどうかが、選ぶ前の分かれ道になります。新聞紙が手に入らない場合は牛乳パックでも使えて、その手順は公式サイトにPDFで用意されています。
収納時の高さは約18センチとコンパクトで、備蓄品のそばに置いておけます。価格は税込19,800円。タイガーのオンラインストア限定商品で、公式が転売品への注意を出しているので、購入先には気をつけてください。
キャンプでも使えるので、備えたまま眠らせずに済みます。
▼電気もガスも使わずに炊きたてを
🌱 今日できるいちばん小さな一歩
全部そろえようとすると、たいてい止まります。
今日やるなら、家族の人数に5をかけて、それに7をかける。この計算だけで十分です。4人家族なら140という数字が出ます。その数字を見てから、いま家に何回分あるかを数えてみてください。
足りない分は、来月の買い物で少しずつ足せば間に合います。2030年代という予測は、裏を返せば準備する時間が残されているということでもあります。
まとめ
南海トラフ地震は2030年代、2035年前後という予測が示されています。2025年9月に国の発生確率は「60〜90%程度以上」と「20〜50%」の併記になりましたが、危険度のランクはいちばん高いままです。
備えるときは、家が無事でも電気と水が止まる前提で考えてください。優先順位はトイレ、水、食べもの。1週間分を目安に、少しずつでかまいません。
今日、家族の人数に5と7をかけるところから始めてみませんか。


コメント