同じ話を何度も聞かされて、そのたびに「さっき言ったよ」と返してしまう。
そんな日が続くと、親のことより先に、自分の気持ちがささくれ立ってきます。
でも、いざ誰かに相談しようとすると、手が止まります。病院に連れて行くほどなのか分からない。本人に「ぼけたと思ってるのか」と言われるのが怖い。そもそも、どこに電話すればいいのかも分かりません。
この記事では、原因の見当をつけるところから、無料で使える窓口、受診を考える目安まで、動く順番に並べました。
読み終わるころには、今週やることが一つ決まっている状態を目指します。
🍵 相談は本人が来なくてもできます

最初にお伝えしたいことがあります。物忘れの相談は、本人を連れて行かなくても、家族だけでできます。
窓口になるのが地域包括支援センターです。市区町村が置いている高齢者の何でも相談所、と考えてください。
ここが意外と知られていません。厚生労働省によると、地域包括支援センターは令和7年4月末の時点で全国に5,487か所あり、支所を含めると7,374か所になります。設置の目安は、おおむね2万人から3万人に1か所です。
つまり中学校の学区くらいの範囲に、たいてい一つはあります。
相談は無料です。介護保険を申し込む前でも使えますし、「まだ何も決まっていないのですが」という電話でかまいません。
🧠 物忘れの原因はひとつではありません
年齢のせいだと決めつける前に、知っておいてほしいことがあります。物忘れに見えるものには、いくつも原因があります。
うつ状態でも記憶があいまいになります。眠れていない、薬が合っていない、耳が聞こえにくくて会話が入っていない、という場合もあります。
甲状腺(のどにある小さな臓器)の働きが落ちても、ぼんやりした状態になります。この場合は薬で戻ることがあります。
つまり、調べてみたら別の理由だった、というのは珍しくありません。だから早めに専門の人に見てもらう意味があります。
若い世代の物忘れとは原因が違うので、混同しないほうが分かりやすいです。
【スマホ認知症とは?】物忘れ・集中力低下の原因と今日からできる予防法
言葉の使い方の変化は、周りが早い時期に気づけるところです。何を見ていればいいのかを知っておくと、記録が取りやすくなります。
🏥 相談先は大きく三つあります

どこに行けばいいのか、性質が違う三つを並べます。
| 相談先 | できること | 費用 | 合わない条件 |
|---|---|---|---|
| 地域包括支援センター | 家族だけの相談、病院や介護サービスの紹介、その後の手続きの案内 | 無料 | 診断はできない。夜間や日曜は閉まっていることが多い |
| かかりつけ医 | 今までの体調との比較、薬の見直し、専門の病院への紹介状 | 診察代のみ | 長く通っている医師がいない場合は使えない |
| もの忘れ外来や認知症疾患医療センター | 検査をして原因を分ける、診断、その後の治療 | 検査を含めて数千円から一万円台 | 本人が受診に納得していないと進めにくい。紹介状が必要な所がある |
迷ったら地域包括支援センターからで大丈夫です。そこから、かかりつけ医にするか専門の外来にするかを一緒に決められます。
認知症疾患医療センターというのは、都道府県が指定した専門の病院のことです。名前が長いだけで、特別に敷居が高い場所ではありません。
📓 相談の前に用意すると話が早いもの
手ぶらで行っても相談はできます。ただ、二つ用意しておくと、その日のうちに話が進みます。
一つ目は、いつ何があったかのメモです。カレンダーの端に「7月3日 鍋を焦がした」「8月10日 免許証をなくした」と書くだけでかまいません。
日付が入っていると、半年で変化したのか、三年かけて少しずつなのかが分かります。これは家族しか持っていない情報です。
二つ目は、飲んでいる薬の一覧です。お薬手帳をそのまま持って行くのが早いです。
私は、この二つがあるかないかで相談の中身がだいぶ変わると思います。
窓口で何をどう聞けばいいのか不安な方は、聞き方をまとめた記事があります。
🩺 受診を考える目安
ここから先は、様子見ではなく病院を考えたほうがいい場面です。
同じことを一日に何度も聞く状態が、半年より長く続いている。これは目安の一つです。
慣れた道で迷った、電車やバスの乗り方が分からなくなった、という出来事が一度でもあったときも同じです。
ほかにも、火を使ったまま忘れる、お金の管理ができなくなってきた、飲む薬の管理が崩れてきた、通帳や財布を「盗まれた」と言い出した、といった場合があります。
数週間のうちに急に進んだように見えるときは、様子を見ないでください。別の病気が隠れていることがあります。
けがや高熱、意識がはっきりしないといった症状が同時にあるときは、その日のうちに医療機関に連絡してください。
診断がついた後は、お金と手続きの話が続きます。先に流れを知っておくと落ち着いて動けます。
💧 心配する家族の側も消耗します
ここまで読んで、少し疲れているかもしれません。
親の変化に気づくのは、たいてい一番近くにいる人です。そして、その人が一番我慢します。
「まだ大丈夫」と言い聞かせながら、頭の中では最悪の場合を考えている。この状態が続くと、眠りが浅くなって、日中の集中も落ちます。
きょうだいに話しても温度が違って、余計に孤独になることもあります。親戚に言えば「気にしすぎ」と返される。職場では話す場面がありません。
こういうときは、利害のない人に一度、順番に話すのが早いです。頭の中でからまっている「不安」と「これから決めること」を、他人の前で分けるだけで軽くなります。
オンラインのカウンセリングなら、家から、親に聞かれない時間に話せます。介護が始まる前の段階でも使えます。
サービスの選び方を先に比べたい方は、こちらにまとめてあります。
🧘 眠れない、動悸がする、が続くとき
家族の側にも、体の症状が出ます。
夜中に目が覚める。胃が痛い。理由もなく動悸がする。肩が固まって回らない。
心配ごとが続くと、体温を保つ、心臓の速さを決める、眠りに入る、といった働きを調整している仕組みが乱れます。気持ちの問題ではなく、体の反応です。
この仕組みを知っておくと、症状が出たときに慌てなくなります。何が起きているか分かるだけで、少し楽になります。
【体調不良がよくならない人におすすめ】本当の自律神経の仕組み🍊メンタフィジカリストりょう【TikTok LIVE】
そして、いらだちや不安の波を、気合いで抑え込もうとすると長引きます。波が来ていることに気づいて、通り過ぎるまで待つほうが早く収まります。待ち方は練習できます。
【メンタフィジカリストりょう🍊TikTok LIVE】メンタルトレーニング【体調不良がよくならない人におすすめ】
⚠️ ここでつまずく人が多いです
一番多い失敗は、本人を説得してから動こうとすることです。
「病院に行こう」と正面から言うと、多くの場合は断られます。そこで話が止まって、半年がすぎます。
順番を逆にしてください。先に家族だけで地域包括支援センターに相談して、連れ出し方まで一緒に考えてもらいます。
健康診断のついでに、という形で受診につなげる方法をよく提案されます。専門の人は、この手の段取りを何百回も見ています。
もう一つの失敗は、電話をかける相手を間違えることです。市役所の代表番号にかけて、たらい回しに感じて心が折れる人がいます。
「地域包括支援センターにつないでください」と最初に言うと、まっすぐ進みます。
🌱 今日からできる三つ
一つ目。カレンダーに、気になった出来事を一行だけ書き始めてください。今日の分からでかまいません。
二つ目。「自分の市区町村名 地域包括支援センター」で調べて、担当の場所と電話番号を控えておきます。行く必要はまだありません。
三つ目。お薬手帳の場所を確認しておきます。見つからないなら、次の受診のときにもらい直せます。
この三つは、全部合わせて15分ほどで終わります。診断を受けるかどうかは、まだ決めなくて大丈夫です。
介護保険を使う段階になったら、申請の順番を先に読んでおくと迷いません。
🙅 こんな人には向きません
この記事は、次のような方には向いていません。
すでに診断が出ていて、薬や治療の中身を知りたい方。ここでは治療の話は扱っていません。主治医に聞くほうが確実です。
本人の意思に関係なく、施設に入ってもらう方法を探している方。この記事は、本人と話せる状態を保ったまま進める前提で書いています。
物忘れそのものを止める方法を探している方。原因を調べる前に効く方法は、残念ながらありません。
急にはっきりしない状態になった、けがや高熱があるという方。読んでいる場合ではありません。医療機関に連絡してください。


コメント