イヤモニは命綱|歌声を守る音響の裏側と真実

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イヤモニは命綱|歌声を守る音響の裏側と真実

ステージの上で歌うアーティストは、ただ“歌っているだけ”ではありません。
照明、歓声、反響する音、バンドの生音——あらゆる情報が一気に押し寄せるカオスの中で、自分の声を“正確に聴く”ことは、想像以上に困難です。

だからこそ、イヤモニ(インイヤーモニター)はまさに命綱。
その設定ひとつ、会場の形状ひとつで声の出方まで変わるほど、繊細で奥深い世界があります。

そして、アーティストの感覚と音声学の知識を両方持った“ボイストレーナー”の存在が、現場では欠かせない柱になっているのです。

今回は、ボイストレーナー安倉さやかさんの言葉を起点に、イヤモニの知られざる役割、そして歌う人の喉を守る音響の真実を深掘りしていきます。

◆ イヤモニは“命綱”。歌う人はなぜそこまで依存するのか

ライブ会場は、見た目以上に“戦場”です。
ステージ上では反響音(リバーブ)、ディレイ、バンドサウンドの重なりなどにより、自分の声が正確に返ってこないことが多いんです。

そこで救世主となるのが、イヤモニ。

  • 自分の声がどの位置にあるか
  • ピッチ(音程)が正しく取れているか
  • バンドとのバランスは適切か
  • どの帯域が聴こえにくいか

これらを“クリアに耳へ届ける”のがイヤモニの役割。

特にアーティストは、普段の練習で「自分がどう聴こえているか」を身体で覚え込んでいます。
そのため、少しでもいつもと違う返りだと喉の感覚が狂い、結果として、

  • 張り上げすぎてしまう
  • 喉が閉まり始める
  • 声がひっくり返る(ブレイク)
  • 高音の入り口で喉が固まる

といったトラブルが起きてしまうんです。

イヤモニはもはや装置ではなく、“声のコンパス”。
声帯という繊細な器官を守りながら、ステージの海を泳ぐための命綱なんです。


◆ 聴覚にも“癖”がある。アーティストごとに全く違う世界を聴いている

人の耳は、まるで指紋のように個性があります。
高音域が聴こえにくい人もいれば、逆に低音が過度に強く聴こえる人もいます。
同じ音を聞いても、脳がどう処理するかで“聴こえ方”は大きく変わるんです。

声を支える帯域は主に 1kHz〜4kHz
この帯域が十分に返ってこないと、歌い手は“自分の声が薄い”と錯覚し、無意識に声を張り上げてしまいます。

逆に 低音域(200〜500Hz)が強すぎる と、声がこもって聴こえ、喉が閉まる方向に働くことも。

ここが“イヤモニ調整”の難しさ。
単純に音量を上げればいいわけではなく、“その人がどう感じるか”が最優先になります。

まさに、音と感覚の綱引き。


◆【なぜ?】場所が変わると感覚が狂うのか

ライブハウス、ホール、アリーナ、ドーム…
会場が変わると音響環境が“別物”になります。

反射、吸音、距離、ステージの素材、天井高、客席の密度。

これらがすべて“自分の声の返り方”に影響します。

イヤモニは耳元の世界を作ってくれるとはいえ、
その外側(実音の世界)が変われば、体が受け取る振動や声の響き方も変わり、それが結果として“歌い心地”を左右します。

たとえば:

  • アリーナのように反響が大きい会場
    → 耳の中と外のギャップが大きくなり、ピッチが不安定に
  • 音が吸われる会場(客席が近いホールなど)
    → 声が“返ってこない”感覚になり、張り上げる方向に

どんなに完璧なイヤモニ設定でも、場所が変われば感覚はゼロから積み上げ直し。
そこに立ち会い、歌い手の“身体の反応”を見ながら微調整していくのが、ボイストレーナーや音響スタッフの大きな役割なんです。


◆ ボイストレーナーが現場でモニタリングする意味

安倉さやかさんが語っていたように、
ボイストレーナーは“歌う人の感覚”と“音声学の専門知識”の両方を持っています。

これは現場でめちゃくちゃ重要。

● 声帯の疲労を見抜ける

たとえアーティスト本人が「大丈夫」と言っても、
発声のフォームや息の流れを見ただけで“負担の兆候”がわかる。

● イヤモニ設定の違和感を、歌い手より先に気づける

「今日の中音(モニター)、高音の抜け悪くない?」
「2kHzが足りてないから、喉閉まり気味になりそう」
など、音響的な指摘が即座にできる。

● 精神的なケアもできる

ステージ前は緊張で“小さな違和感”が増幅されやすい。
そこを言語化して安心させるのが、まさに職人技。

現場にボイストレーナーがいるだけで、
“声を守るための保険”が一つ増えるわけです。


◆ イヤモニの世界は「音」ではなく「感覚」を扱う仕事

最終的に、イヤモニ調整は“数値”では決まりません。
周波数の特性や音圧レベルは参考になるけれど、
アーティストの身体感覚が正しく働くことが最優先。

  • 音は合っていても、感覚がズレていれば歌えない
  • 周波数は理論値通りでも、喉の通りが悪いこともある
  • 最終的に「歌える音」であることが絶対条件

音響は科学、発声は生理学。
両方をつなぐのが“感覚の翻訳者”=ボイストレーナーの役目なんです。


◆ イヤモニがもたらす「安心」が、最高のパフォーマンスを生む

歌は、メンタルの影響を強烈に受けます。
“いつもの聴こえ方”ができるだけで、心が落ち着き、声の伸びが全く変わるんです。

イヤモニは、ただ音を返す装置ではありません。
アーティストの心拍、呼吸、ピッチ、声帯のバランス…
すべてを安定させる“心のホームポジション”。

だからこそ、命綱なんです。

その裏側には、音響と発声の両方を理解するプロたちの努力があり、
そのすべてが“1曲の成功”のために積み上げられています。

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